著しくQOLを低下させられている。
歴史は繰り返すという。磯田道史の著書を読んでもなるほどなと思う。人間の本質なんてそう簡単に変わりはしない。
ポルノグラフィティも謳う。
僕らが生まれてくるずっとずっと前にはもう アポロ11号は月に行ったっていうのに
僕らはこの街がまだジャングルだった頃から 変わらない愛の形探している
僕は顎の輪郭線にできるニキビの治し方を探している。二年前も、今も。
特段美しい顔を持ち、それで商売をしているわけではないので、多少の凸凹が顔にできても別に構わないと思っている。だが、目下腫れている状況だと、とにかく患部が気になって仕方ない。輪郭に喉仏ができたみたいになっている。
ニキビの原因は皮脂の詰まりが原因だという。皮脂が毛穴に詰まって、ニキビができて、炎症を起こしたりして腫れ出す。現段階を顧みると、相当腫れてしまっている。どうやら僕の輪郭付近の毛穴は皮脂で詰まりまくっているようだ。
なぜ輪郭か。輪郭だけをおろそかにしていたのだろうか。顔を洗うときに輪郭だけちょっと洗いきれていなかったとか、そんなことあるのだろうか。
奥歯が虫歯になるメカニズムはよくわかる。奥歯は得てして食べカスが詰まりやすいだろうし、ブラッシングの手が届きにくい。液体ハミガキは全口腔内にくまなく行き届くからおすすめだよ!という話。
いいとして、翻って輪郭線はどうだ。特別に皮脂が詰まりやすい構造をしているわけでもあるまい。ジメジメもしていない。風通しもいい。新しい地図でも描けそうである。さらに髭剃り過程で必ず輪郭には洗顔の手がいく。これほどまでにニキビ醸成に適さなそうな場所に、エラい爆弾を抱えてしまっている。
触るなという。むちゃくちゃを言うな。
目の前に富士山があるとする。どうする?見るだろう。仰ぎ見て、あぁ、富士の峰だ。峰不二子だ。と、シンメトリーの美学に眼福するだろう。じゃあ、顎の輪郭線に富士の峰を抱えたとして、無視していられるだろうか。否。確実に触る。存在感が無視させない。僕を捉えて離さない。
気がつくと中尾彬のようなポーズをとっている。顎を撫ぜるふりしてニキビにちょっかいをかけている。気がつくと頬杖を付いている。物憂げに思索に耽けるふりをして、ニキビにちょっかいをかけている。手のひらで包み込めば少し暖かく、指先で触れば絶妙な弾力で跳ね返してくる。興味が尽きない。
そうしてまた育つ。顎の富士がじわじわと膨れていく。
噴火は近い。