三日月ロックというアルバムがある。
- アーティスト: スピッツ,草野正宗,石田小吉,亀田誠治,クジヒロコ
- 出版社/メーカー: ユニバーサルJ
- 発売日: 2002/09/11
- メディア: CD
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これが好きだった。
世に言うスピッツの代表曲は入っていない。強いて言えば「遥か」が有名かもしれない。世に言う曲は入っておらずとも、ものすごく粒揃いなアルバムである。
どの曲がどうとかは置いておいて、兎にも角にもエスカルゴ。
アルバムのデータが昔のパソコンに置き去りになったままだったため、借り直してパソコンに取り込み、シャッフル再生の最中今日の帰宅中に流れてきたエスカルゴ。
びっくりするほど単純明快なギターチューンである。高校生バンドがせーので作った曲の精度を上げまくったみたいな曲だ。コードも5つか6つしか出てこないんじゃなかろうか。ギターソロも難しいことがない。メロディーもわかりやすい。マサムネなので声は高いが、駆け出しバンドにはうってつけの曲ではなかろうか。
しかし、歌詞。いわんや、曲名。
なんだろうかこれは。エスカルゴ。エスカルゴってご存知だろうか。サイゼリヤとかにあるあれだ。カタツムリをオリーブオイルで浸して煮たあれだ。エスカルゴ。歌詞の中身はなんとなくラブソングっぽい。しかし、曲名はエスカルゴ。
考えてもみろ。「誰もさわれない二人だけの国」について歌った歌がロビンソンである。もはや曲名に思い入れもへったくれもないらしい。
でもよくよく聞いてみると、エスカルゴにはエスカルゴを彷彿とさせる歌詞がある。
孤独な巻貝のそこから ふざけたギターの音が聞こえるよ
巻貝。なるほどカタツムリも巻貝背負ってるから。多分この文脈の巻貝って耳の奥のうずまき管のことも含みで言っているんだろうとも推測できる。
が、それだけじゃない。草野マサムネがそんなソフトな歌を歌うはずがない。死とセックスのことしか歌わないと公言しているマサムネである。中途半端なラブソングなんて歌うはずがないのだ。
つまるところ、エスカルゴも大概セックスの歌であるに違いない。歌詞の端々からもほとばしるエロを感じることができる。
だめだな ゴミだな さりげない言葉で溶ける心
コワモテ はがれて 仕方ねえと啼いて 耳をすます
孤独な巻き貝の外から ふざけたギターの音がきこえるよ
マサムネの歌うゴミとかクズはだいたい愛情の裏返しなので、心は溶けてしかるべきである。そして、啼く。盛りである。一応エスカルゴだから巻貝ってカタツムリ関係かなって思うけど、多分アワビの隠喩なんじゃないか。だって、マサムネだから。
湯けむり 陽だまり 新しい光に姿さらす
おだやかな寒さ ぶつけ合ったコマは いつか止まる
枯葉舞い 恋の雨が降る よれながら加速していくよ
光に姿をさらした後にコマがぶつかりあってヨレちゃう。どことなくやっぱりエロい。
ハニー君に届きたい もう少しで道から逸れてく
何も迷わない 追いかける ザラザラの世界へ
届きたくて、触れたくて、道から逸れてでも、合法でも非合法でも届きたくて、触れたくて、もはやそこに迷いなんかなくて、ひたすらにザラザラの世界、つまりは孤独な巻貝の中の世界を求めていくと。
一番だけでこれだ。もう、いたたまれない。
爽やかかつ単純なロックチューンに乗せていい歌詞ではない。オリーブオイルでべちょべちょである。
なんでしょう。熱っぽく話したけど、一度聞いてみるといいでしょう。
寝ます。