食堂でご飯を食べた。さつま揚げの旨煮だという。個人的に、旨煮というジャンルにハズレはないと考えている。何しろ旨いのだ。名に自ら旨いと冠する旨煮が旨くないはずがなかろう。そういうわけで、白菜の旨煮を筆頭に、旨煮があれば旨煮を食べるようにしている。今日もそうだ。
人参、玉ねぎ、蓮根、ジャガイモ。煮物オールスターズとも称せるような根菜界の錚々たるメンツに引き立てられ、さつま揚げが鎮座している。人参の旨煮でも、じゃがいもの旨煮でもない、主役は俺だ、さつま揚げだ。とでも言うように。そもそも、練り物は旨味が凝縮されているものだ。旨味の塊をさらに旨く煮たというさつま揚げの旨煮。鬼に金棒、バルサにグリーズマンである。
一枚100円もしないようなお皿におばちゃんが旨煮をよそる。これから始まる旨味・フィル・ハーモニーの演奏に心躍らせる。
不意に、おばちゃんが訪ねる。
グリーンピースを入れてもいいですか?
いいですよ、入れてください。
それとなく答えるも、この質問が、旨味のオケを心待ちにして踊った僕の意識を現実世界に引き戻した。
なぜおばちゃんはグリーンピースを入れてもいいか尋ねたのか
一つ一つ、考えていきたい。おばちゃんがグリーンピースを入れていいか尋ねた理由として、主だったところで3つ想定される。
- 嫌がる人が多かった
- マニュアルにそう書いてあった
- おばちゃん個人がグリーンピースを好まない
このうち、マニュアルにグリーンピースを入れるか確認をしましょうと書いてあったとして、その理由もグリーンピースを嫌がる人が多いからであるし、おばちゃん個人の問題だとしてもグリーンピースは好まれていない。嫌がる人が多かったも自明。
つまり、グリーンピースを好む人が少ないという前提のもと、グリーンピースを入れてもいいですか?の質問はなされている。
似たようなの事象で、レモンかけてもいいですか?問題がある。
唐揚げにレモンをかけるかかけないか。カキフライにレモンをかけるかかけないか。社会人が交わすメールの文頭に「いつもお世話になっております」をつけなければならない同調圧力の如き慣例として、レモンかけてもいいですか?のコールアンドレスポンスが行われている。
がしかし、グリーンピースとレモンの話は本質的に全く異なる。レモンについては、食事を提供する側が一方的にレモンを添え、後の対応を食事をする側に任せているが、グリーンピースの場合は食事を提供する側が食事をする側に尋ねている。いわゆる、前捌きである。あなたに、グリーンピースを食べたり避けたりする判断を委ねることはしません、私が先んじて対応してしまいます。という、素晴らしいホスピタリティの裏腹に潜む、グリーンピース嫌いでしょ?の強迫観念。
紅生姜の方がまだいいかもしれない。あいつは嫌いでしょとも好きでしょとも言われず、ただ佇んでいる。主義主張を最低限に抑えたルックスで、主に牛丼屋なんかに立ち尽くす。そして案外手に取られ、食される。策士である。
なぜ、グリーンピースが嫌われるのか
そもそも、あなた、グリーンピースって何か知っていますか。彩りが、、、栄養が、、、と給食をムシャムシャしていた時分からグリーンピースのお世話になっている諸君が多いと思うが、グリーンピースとは、エンドウ豆の子供である。
さやえんどう、グリーンピース、エンドウ豆。エンドウ一家の中で唯一エンドウの名を冠しないあたり、一家からも虐げられている感がある。
エンドウ一家爆アゲのページでも、長めに茹でたら苦味が消えるよ!と苦味前提の話が展開されている。茹でてもモソモソは消えない。救いの手は伸びない。
今日はクリスマス
知ってますか、今日はクリスマスです。
僕がお昼ご飯で食べたグリーンピースについてあれでもなくこれでもないと語っている間にも、そこかしこで愛だ恋だくんずほぐれずエラい騒ぎな訳です。
帰り道の星は今日も相変わらずきれいに瞬いていました。
クリスマスやバレンタインデーはキリスト教由来の行事です。教組の誕生日がクリスマス、教組の復活日がイースター、バレンタインさんが殉死した日がバレンタインデー。一方で、七夕や節句などは日本の行事です。
キリスト教は人に由来する行事が多いのに、日本は天文や暦に由来する行事が多いのはなぜかなぁ、日本人が農耕民族だったからかなぁ。でもベツレヘムの羊飼は星を見てイエスの誕生を知ったよなぁ、孔明もだったなぁ、人は星に何かを気づかされるなぁ。
綺羅星のような輝きを放つ星がある一方で、気がつかれもしない星だってたくさんあります。宇宙には地球上にある砂の数よりも多い惑星が浮かんでいるという天文学者もいるほどです。そもそも、見える見えないの主体だってたかが人間です。ちょっと人間の住んでいる星に近い星がそこそこ光っていて、それに人間が勝手に意味づけをしているにすぎません。
グリーンピースだってそうです。
モソモソしてるのも苦いのも、所詮、人間の舌で感じる程度のことです。人間から見えないだけで、猛烈な星もあるでしょう。僕が知らないだけで、猛烈に興味を惹かれる何かも、ものすごく相性の良い人もいるでしょう。もしかしたら僕も、誰かにとってのグリーンピースなのかもしれない。そんなことすら思います。
僕は、なにを伝えたかったのでしょうか。
メリークリスマス。