徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

歌うたいの風呂ット居間ット家ット

もうすぐ北海道から東京へ戻らねばならない。ここ一週間、毎夜毎晩出かけては飲み食いをしていた。外は白い雪の夜。でも居酒屋の中は本当に温かくて思い出話に花を咲かせまくっていた。百花繚乱であった。

外出先でも羽を伸ばしていたのだが、何しろ実家である。父と母が仕事に出た後、僕が自意識をこじらせに図書館に行くまで、実家で一人になる。お留守番状態。東京の集合住宅で出来ない事をしようと、ギターを弾き、ピアノを弾き、歌う。なんだ、一人の時間は兎にも角にも歌い散らかしている。特に中島みゆきが堪らなく気持ちいい。衒うことなき環境下、歌のうまさなんてどうでもいい自意識が底をつきた状態で歌う中島みゆき。特に用もないのに風呂に行って、エコー効かせて歌う。叫ぶ。腹の底から声を出す気持ちよさを僕は思い出す。

集合住宅でも別に気を使いまくっているわけじゃないのだが、やはりどうしてもボリュームは下がる。隣の部屋の物音がたまに聞こえるたび、部屋の中で歌うことがはばかられ、カラオケに行くのも面倒だから鼻歌で我慢する。ウィスパーボイスで中島みゆきを歌っても何も面白くないもので、たいていそういう時は昔聞いていたバンプオブチキンあたりのつぶやきソングを口ずさむ。

抑圧された欲求はのど元迄せり上がり、一軒家で隣の家とも十分に距離が保たれている実家に着た後解き放たれた。無意識のうちに溜まった鬱憤を晴らすかのような叫び。「地上の星」「命の別名」「たかが愛」「浅い眠り」。

あぁ、なんでしょう、東京戻りたくありません。