徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

一人っ子に生まれてみて。メリットとかデメリットとか、そんな感じのやつ。

一人っ子として育ってきた。この世に生を受けてやや四半世紀。僕の母から出てきた子供は後にも先にも僕だけである。先導も後続もいない。

「一人っ子 特徴」「一人っ子 子育て」「一人っ子 わがまま」

「一人っ子」で検索すると海千山千の言葉が後に続く。どうやら皆々様一人っ子に興味があるようだ。一人の女性が生涯に産む子供の数が二人を割りこんでからどれくらい経つのか知らないが、肌感覚的には未だに兄弟がいる方がマジョリティである。育った環境が人間性に与える影響は言わずもがなであり、それは血液型占いなぞよりも間違いなく人となりに関わってきている。諸事情により一人っ子を育てなければならない親が一人っ子の育て方がわからないとか、一人っ子の感覚がわからないとか、ご両親も一人っ子をどう扱っていいものやら苦慮しているのだろう。

一人っ子として育った感想をつらつら書いていく。育児においては「一人っ子を育てた」感想の方がよほど役に立つだろうが、一つの当事者の目線として書く。

 

大前提として、僕は一人っ子に生まれて辛かったことはこれまででそう多くない。ある種の生きづらさや感情の動きが一人っ子由来のものなのかもしれないなと感じたことはあるものの、概ね、一人っ子を肯定的に生きている。この先、両親伯父伯母が老いていった際、一人っ子のしんどさが波状攻撃を仕掛けてくるのかもしれない。それはなんともわからない。

一人っ子の1番の特徴はやはり、同年代の人間が身近にいないことだろう。一人っ子にまつわるメリットやデメリットはあらかたここから生じるように思う。僕も両親、伯父伯母、祖母に囲まれて育った。身近な同年代は6個か7個上の従兄弟。遊んでもらってはいたがそんなにしょっちゅう会うわけではなかった。

年齢的な孤島で育つということで養われるのは大人とコミュニケーションをとる能力だ。

家族の集まりに行くとしよう。一人っ子長男なのでそりゃ可愛がられるのだが、しばらくすると大人は大人の話をしだす。子供はおとなしく遊んでいてねの時間である。この時間をどう過ごすかが一人っ子の大きなポイントとなる。何かに没頭できる時間であり、ある意味の疎外を感じる時間。一人っ子もバカではないので、しばらくすると大人の会話を覚える。大人が面白みを感じる話し方や話題を覚える。子供の土俵に大人を引きずり込み、一生懸命に話したところで、大人は子供用の笑顔と対応を見せるだけだ。大人が本当に面白がるのは、こちらが大人の土俵に上がり、面白いことを喋った時しかない。この辺りを一人っ子は敏感に察知する。なので、話し方とか話題は歳よりも大人びていく。可愛がられるための生き残りゲームである。

対して、全くもって育たないのは敵意への対抗措置だ。何しろ周りには分別をわきまえた大人たちしかいないので、極端な理不尽に見舞われることは少ない。道理にそぐわない出来事や敵意と遭遇することがないので、圧倒的にそういった面で打たれ弱い

兄弟がいたことがないのでよくわからないのだが、おもちゃや食べ物、陣地に至るまで、兄弟がいると日々抗争が絶えないようである。すると、自分のものに対する執着心の捨て方や所有物をぶんどられた時の気持ちの整理力などがすくすくと育つ。しかし一人っ子はその部分がすっぽり抜け落ちている。そのため、感情を爆発させて遮二無二相手を罵倒しまくるみたいな猛々しい反発の術を持たない。心優しいといえばそうだが、まじで丸腰。情けないほどに。

以上2点が同年代が身近にいないために生ずる力学なのだが、合わせ技一本で複雑な幸と不幸を呼び込む。

第一に大人が好きになる。年上が好きとかっていう次元ではなく、遥か上、父親母親世代が話しやすくて仕方なくなる。必死に大人の土俵に上がろうとする行為が大人の世界、大人の話題への憧れと変わる。それと同時に理不尽極まりない幼稚園や小学校のお友達が苦手になってくる。同年代怖い。なんとなく敵意向けられそう。怖い。こんな気持ちがムクムクともたげる。結果、未だに僕は母親世代にしか生身でブチ当れない。同年代には猛烈な警戒心と全力のコミュニケーションを持ってしてでないと立ち向かえない。

その代わり語彙力は増える。たまたま僕が一人っ子サバイバルするための手段として会話を用いたために、語彙力の引き出しがまずまず整った。引き出しの数もさながら、大人に食らいつくために瞬発的に引き出しを開ける能力も育ったように思う。一人っ子様様だ。これが例えば、大人の会話の土俵に殴り込まずに、新たな土俵に乗った場合を考えてみよう。大人の会話でも子供の会話でもなく、新しい土俵。芸術だとか、音楽とか、スポーツでもいい。全く歯が立たない連中になんとかして認めてもらいたいという気持ちが起きやすい一人っ子は、何かの能力に人より少しだけ秀でやすい環境にあると言えると思う。努力と時間をぶっ込みやすい。

 

一人っ子は社会性が育たないとか言われがちだが、違うと思う。兄弟間のコミュニティで育たないものの代わりに大人とのコミュニティを先取りしているわけで、ある種早熟であり、老成している。ただ年相応のコミュニケーションを取る場面が不足しがちなので、そういうのを公園とか児童館で補ってあげるといいよねって話だ。無論、僕は未だに不足している。馴れない同年代との会話は、持ちうるボキャブラリーをフル活用して挑むが、めっちゃ疲れる。大抵喋りすぎて引かれる。か、察知して途中から途端に黙る。実に難しい。

一人っ子ってことをあまり考えてこなかったが、そういえば一人っ子だ俺って思うことがちょっとあったので書いた。別に追記とかする気ないけど、なんか他に思い当たる節があったら書いていこうと思う。

悪くないです。一人っ子。やりようによっては薬にも毒にもなるのは、なんだって一緒だから。