徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

ハモり

じゃ、僕上行くんで。

そんな風にさらっとハモる連中というのが一定数いる。音感がどうかしているとしか思えないのだが、主旋律さえ把握していれば三度の音をバチバチに当ててくる。

音楽が好きで、聴くのも弾くのも作るのも好きで、かれこれ20年近く親しんできているけれど、一向にハモりは上手くならない。できないわけではない。一生懸命ピアノで三度上のハモりパートを探して、覚えて、歌うことはできる。でもそういうのがしたいんじゃない。誰かが歌っている側で、ふわっとハモる。じゃ、俺上行くから。って言いながらさらっとハモる。それがしたいんです。

得意なメロディがあるらしく、たまにカラオケとか行くとめっちゃ上手くハモれる歌と出くわす。帰省の際に伯父と歌った「あの素晴らしい愛をもう一度」はものすごくハモりやすかった。自分でもびっくりするくらい自然にハモれたんだけど、さも当たり前みたいな顔して歌った。

 

今、コブクロの「蕾」をハモらなければならない案件が発生している。

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言わずもがな、名曲である。

小渕健太郎という天才が黒田俊介というイケメンボイス巨人の周りを変幻自在のハモりでまとわりつくスタイルで名フォークデュオとしてのし上がった。サイモン&ガーファンクルと同じスタイル。

蕾では主にBメロとサビをハモっている。しかし二者間でハモりの難度は大きく異なる。

聴いていただければわかるだろうが、Bメロは上でハモっているのに対してサビでは下でハモっている。下でハモる難しさったらない。サビでめっちゃ声を張っている主旋律に釣られず、大した声も張れない地声真っ盛りな音域で音を外さずに歌わねばならない。端的に苦行である。

こいつは練習しないと出来やしない。懸命に聴き込んでいる。

 

ハモりばっかり練習していると、どれだけ主旋律が気持ちいいものかを知る。しかし、主旋律を生かすためにハモりが必要なこともまた知る。

就活が解禁になり、面接が激化した頃、「潤滑油のような人間です」と嘯く学生がきっと現れるに違いない。そんな彼に、彼女に、僕は教えてあげたい。ハモりパートのような人間もいいもんだぞと。潤滑油なんて手垢のついた言葉じゃなく、主旋律を生かすために必須の人間だと、アピールするのも、いいものだぞと。主旋律からしたら、三度上、三度下を守られる安心感がある。何よりはたから見たら美しい。ハモり。

聞こえない頑張れをくれる人は、何処。