徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

「結論から話してください」と伊勢正三の相入れなさはどうかしている

端的に。端的に。結論から。結論から。

上司も暇ではない。限りある時間を有意義に使うことがやはり昨今の働き方改革を率先垂範するためには不可欠である。要点を押さえ、かつ、冗長な情報を削ぎ落としたソリッドな言葉で報連相。核心だけを掴む難しさをここのところ非常に強く感じている。

そんな中、心の音楽「風」を聴いた。風については散々他の記事でも書いているので、そちらを参照されたい。端的に言うと、元かぐや姫伊勢正三の作詞作曲力と歌唱力が全盛だった頃のフォークデュオである。大好き。

 

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北国列車という曲がある。

ぼくが君を追いかけてる夢から目覚めた時は

汽車は夜を走りつづけ朝の駅へついたところ

君を忘れるため 長い旅に出て

旅の終わりにこの街を選んだ

去年の今頃汽車に乗り 二人で旅した北国の

あの雪の白さが何故か忘れられずに

Emという、フォークならではのコードの上で繰り広げられるメロディには郷愁と寂寞の念が溢れる。

ぼくの他には後少しの人を降ろしただけで

汽車はすぐにまだ暗い朝に消えて行った

思い切り背伸びをした 薄暗い空に

君の星座がまだ光ってる

君の生まれたあの星が こんなにきれいに輝いて

君と暮らした東京では 見たことなかったけれど

この、君の星座のくだりこそフォークだ。フォークが何だかよくわかっていないが、フォークのエッセンスが濃縮還元されていると感じる。

君を忘れようとして、君の影から逃げるように乗った汽車。しかし、結局足が向かうのは二人で旅をした北国。雪の白さが忘れられなくて、結局君のことが忘れられなくて、でも君はいない。そんなぼくを見下ろす空の星座。君の星座。

どうしてくれようかと思う。このいじらしいほどに未練たらたらで情けない男の姿をどうしてくれよう。殆ど出来事を朴訥と紡いでいる歌詞だし、正やんも淡々と歌ってるだけなのだけれど、猛烈に感情を揺さぶられる。

 

しかし、殺伐とした気持ちで歌詞を見てみると、これは確実に上司に叱られる文章だ。

で?結論から話してもらっていいですか。

猛烈に詰められる光景がありありと浮かぶ。怖い。ひぃぃぃ…やめてくださいもう一回練り直してくるんでもう公衆の面前でマウント取ってボッコボコにするのは勘弁してください。端的に話そう話そうと緊張した挙句激カミして日本語が喋れなくなるんで。怖い怖い。

核心をつかもう、核心をつかもうと、日々頭を働かせていると、次第に脳みその容量に遊びがなくなってくる。不意に北国列車を聴いて、歌詞を噛み締めた。へ?こいつ何言ってんの?結局何が言いたいの?こんな気持ちが一瞬浮かんだ。戦慄した。なんてことのない言葉の並びから情景を類推する楽しみを忘れかけていた。通勤中風をローテーションして、なんとかかんとか凝り固まりをほぐし、やっとこさ文章を書いている。

やっぱり含みって大事だよなと思いながら、うまくオンオフスイッチを使い分けてやっていければいいと、心底思った。

よかったらまじで風も聴いてみたらいいと思う。

 

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