ある衝動に駆られて、サイレントギターなるものを買った。
これだ。
スッカスカのボディ。馬鹿にしてるかのような軽さ。鳴るの?ギターなの?近代建築家の何某かが作ったかのような造形。
だがしかし立派なYAMAHA製。
なぜ買ったのか。なぜサイレントギターなのか。弾いてみてどうなのか。気になるだろう。そうだろう、気になるだろう。教えよう。
なぜ買ったか
我が家のギター事情が大きく関わっている。
これまで、1人で音楽を楽しむ術として、宅録と弾き語り、ふた通りの手段を用いていた。宅録ではYouTubeに曲を上げ、弾き語りでは背伸びしてライブをしたりなど。
精力的にインドア内向的ミュージックライフを生きていた。
では、各々の場面でどんなギターを使っていたか。
宅録の方法として、パソコンにDAW、いわゆる多重録音のソフトをインストールして、さらにパソコンにオーディオインターフェースという機材を接続。インターフェースとギターを繋げることにより、ダイレクトにパソコンへと音を送り込んで録音している。
わけわからん人にはわけわからんだろうし、わけわかる人が見たら説明違くね?ってなるかもしれない。このざっくり説明で何をわかってほしいかというと、宅録ではエレキギターを使っていたということ。それだけである。
対して、ライブにおいてはアコギの前にマイクを立てて、生音を拾ってもらいながら歌っていた。ボリュームの制限、音質の制限をかけられまくった弾き語りライブであった。
録音ではエレキ。ステージではアコギ。
このねじれ構造を解消したかった。つまり何が欲しかったか。エレキ的なアコギが欲しかった。所謂エレアコである。エレキみたいに電気の回路を通して音が大きくなるアコギである。
アコギの音を大きくするのには三種類方法がある。
- 今までやっていたみたいに、アコギに前にマイクを立てて音を大きくする方法
- 普通のアコギにピックアップっていうアンプにつなげられるような装置を後付けして、アンプにつなげて音を大きくする方法
- そもそもピックアップが付いているアコギを買う方法
一番目は例のごとく、音の大きさに限界がある。カフェとかでやるならいいがしかし、ライブハウスではどうしようもない。音ちっさい。
二番目が一番多い方法で、ミュージシャンとかがよくやる。
三番目は一番手ごろな方法だが、アコギ大好きこだわりたい人間には敬遠される。
二番と三番で何が違うのかといえば、そもそもアコギとして鳴らしたいか、アンプ通す前提でアコギを鳴らすか。
難しい話はよくわからないのだが、何しろアコギは音の振動と木の振動が鳴りの全てらしく、どれだけいい材を、どれだけ凝った工法で作っているかで価格が決まる。
だからアコギとして作られたギターは、価格の分だけいい材質だし、鳴る工法なのである。
対してエレアコはピックアップ代もその価格に含まれている。更に、アンプを通してしまえばそもそものギターの鳴りなんて大差はない。
つまり別にアコギとしてならなくても、アンプを通してアコギの音がしっかりすればそれでいいのだ。
鳴るアコギと、鳴らないエレアコ。
ピックアップを後付しないとアンプに繋げないアコギと、そのままで繋げられるエレアコ。
本体価格がそのままギターの良さを表しているアコギと、本体価格の内訳にピックアップの質も含まれているエレアコ。
我が家手持ちのギター事情を振り返ると、アコギが一本、エレキが一本。
アコギにピックアップを付けてもよかった。確かに、それでもよかった。だがせっかくである。社会人である。たまには大きな買い物もしようじゃないか!飲み会10回分くらいの買い物をしようじゃないか!ちょっとおしゃれだし、アコギの形じゃなくてもいいじゃないか!
という考えのもと、購入した次第である。
実際に鳴らしてみてどうか
造形を見てわかるように、こいつ、全く生身じゃ鳴らない。
だが問題ないのである。先述の通り、アンプを通す前提であるから。むしろ夜に弾きたいだけ弾けるあたり、集合住宅住まいにはうれしい。アンプのない我が家だが、なんとこのサイレントギターはギターに直接ヘッドフォンを差し込んで音が聴ける。更に二種類のエフェクト(エコー)にほんのちょっとしたイコライザーもついている。
平たく言おう、便利だ。
しかし、やはり作られたアコギの音感は否めない。所詮スカスカのボディである。
アコギ独特の音の奥行き感はない。アコギが好きで、材にもこだわりたい人にとってはギターの風上にも置けない代物だろう。けど、あまりこだわらないよー!アコギの音が聞こえればいいんだよー!って人には、結構おすすめなんじゃなかろうか。
弾き心地的には、ボディが薄いため、上半身をどこに置いたらいいやらわからなくなる点と、若干の弦高の低さ、あと、カッティングした時の残響の煩さを顧みなければ、そんなにどうってことない。アコギである。
カッティング大好きな身としては、録音時にカッ!ジャッ!ってあまりにうるさいのは困るのだけれど。
今後はこいつを駆使しながら、より幅広い楽曲の制作に取り組む次第である。