徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

恋愛サーキュレーションとミライボウルから考える女性が歌うヘタウマラップの可愛さについて

ポルカドットスティングレイしか聞かない日々を抜け出し、ネバーエンディングビーチなるシティポップを消化した後、僕はいま恋愛サーキュレーションしか聞いていない。

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恋愛サーキュレーションとは、化物語なるアニメに登場する千石撫子というキャラが歌っている曲だ。声優は花澤香菜さんという方らしい。たまたま、オススメ動画でライブ映像を見て、なるほどこれは卑怯なやつだと非難しながらもずーっと見ている。聴いている。

まずメロディが秀逸である。どう考えたって売れ線の優秀メロディを冒頭とBメロ、サビに持ってきているんだから、これは聴きやすい。また、声優ならではだが、声が可愛い。声がか弱い。天然のウィスパーボイスである。メロと声質のかけ算の威力は強烈で、バターと醤油のような破壊力で耳と脳を襲う。

しかしこの曲をここまで有名にさせているのは、メロの良さだけではない。良質メロに挟まれたヘタウマラップである。良メロのアニメソングなんて恐らくたくさんあるのだろうが、恋愛サーキュレーション恋愛サーキュレーションたらしめている部分はこのヘタウマラップだ。間違いない。

 

そもそも、ヘタウマラップとはなんなのか。

僕の貧相な音楽への知識をフル動員したところで、この手のヘタウマラップ曲は恋愛サーキュレーションももいろクローバーZミライボウルしか思い当たらない。誰か他に知っているなら教えて欲しい。

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ヘタウマラップを二曲しか知らず、何を語るかと言われるかもしれないが、この二曲が好きなのであればきっと僕はヘタウマラップが好きなのだろう。あーりん可愛い。

絶妙にリズムを外しながら言葉を乗せ、絶妙に音程を取らないでメロディを作る。これぞヘタウマラップである。普通のラップとは一線を画す。普通のラップであれば、コードのルート音には少なくとも音を乗せながら言葉を並べたてる。RADWIMPSを聴いてみたらわかる。

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ヘタウマラップとは言葉の数的には変わらずとも、音の取り方が違うのが感じられる。

 

思うに、ヘタウマラップは朗読の延長線上にあり、一般の日本語ラップは歌謡の延長線上にある。訥々と日本語をしゃべる中で、ところどころメロディとリズムにのせるのがヘタウマラップであり、リズムと音程を確実に守りながらたくさんの言葉を突っ込んでいくのが日本語ラップ。そうなると音楽として聴きやすいのは一般のラップであるということになる。

それでも、それでも僕はヘタウマラップに心惹かれる。女の子の歌うそれに夢中になる。

僕はきっと、ヘタウマラップに日常を見ているのだ。基本、音楽は虚構である。飾っている。ごくごく私的な出来事を、「君」なんていう抽象名詞を使って一般化し、誰の事でも当てはまるように作られた嘘である。自然界に溢れる音を体系的に鳴らして、科学に則った聴きやすさをメロディと呼んだだけのフィクションである。嘘に塗り固められた曲中に、不意に現れる日常。リズムとメロディを無視した日常。職場でしか見ない人とプライベートでばったり出会った時のような、不意のときめき。ヘタウマラップから滲み出る等身大の姿に、僕はどうしようもなく揺さぶられる。千石撫子に、花澤香菜に、あーりんに、かなこに、惹かれていくのだ。

これから睡眠に向かっていくが、また僕は恋愛サーキュレーションを聴くだろう。虚構にはみ出た造られた日常と共に眠るのである。

次の休日、化物語を観てみようと思う。