BiSHの新曲。
暫く前に公開されているけれども。
BiSHといえば、楽器を持たないパンクバンドというコピーを標榜している。
パンクと言って、どんなバンドを思い浮かべるだろう。
音楽のジャンル分けなんてあってないようなものだと思っている。特にロック界隈ではスペクトラム的にジャンルの地平が広がっているから、
「ここからがパンクでここからはメロコアでここからはグランジ。でも、だいたい全部オルタナ。」
みたいな分け方なんて出来ない。
BiSHがこれまでパンクバンドを標榜して評価を得てきた背景には、松隈ケンタ氏の提供する楽曲が、どの曲も20代でJ-ROCKを儀礼的に通過してきた者たちのストライクゾーンにドンピシャにハマっていたことがあると思う。
いわゆる、BUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATION、ELLEGARDEN、10-FEET。僕ら世代のロックヒーロー達が築いたレールの上に、BiSHの楽曲が存在する。
その辺りは以前の記事に書いた。
果たして、実にアイドルっぽくない地平を切り開いてきているBiSH。
前回のアルバム「GiANT KiLLERS」あたりからストリングスの鳴る回数が増えてきたと思ったら、今回の「My landscape」である。
本楽曲においてのメインはストリングス。
ロックバラードのサビに壮大なストリングスが入るとかってレベル感のストリングスではなく、ほぼほぼストリングスが楽曲の中心にある。ギターの登場は一番終了後の間奏まで待たねばならない。
GLAY大先生の金字塔「HOWEVER」でさえ、HISASHIが待ちきれずに頭サビの後の感想でギター弾きだしちゃうのに、My landscapeはとことん我慢する。
我慢して我慢して、ようやっと歪んだギターが入ってきたと思ったら、すぐ消える。で、また間奏になったら現れる。ギターロックにストリングスが乗っているのと、ストリングスメインの楽曲にギターが入ってくるのとでは、ガニメデとエウロパくらい違う。
これまでSEX PISTOLSの一派だったはずなのに、気づいたらQUEEN一派に吸収合併されていたような、そんな衝撃を受けた。
僕は思う。
もはや、パンクバンドではない。
パンクバンドに表現できる範疇を超えてきている。
でもそのくせ、曲の展開は分かりやすいし、コード進行もヒネちゃいない。王道のロックの、豪華ストリングスアレンジ。
意図はなんなのか。別にギターロックにできただろうに。むしろ、ギターロックにした方が簡単だったろうに、何故、こんな大掛かりな曲を作ったのか。
BiSHはこれまで、リキッドルームを埋め、新木場を埋め、Zeppを埋め、さらに幕張を埋めた。急速なキャパの拡張。これに耐えうる曲を作ったのだろう。次はどこだ、アリーナか。
そうとしか思えない。
MVへの投資も強烈である。
なんか普通に飛行機の翼の上とかに乗ってるけど、全然それって普通じゃない。
ロケ地はアメリカ、モハーヴェ砂漠とのことらしい。
BiSH新曲「My Landscape」MVに隠された7つの謎とは!? – BiSHと全国清掃員による武道館への道程
素晴らしいまとめがありました。勉強になります。
デビュー曲の「BiSH-星が瞬く夜に」では、結構その辺の道端で撮影していた。
たまたま近くでドローンを飛ばしてたおじさんをひっ捕まえて空撮してもらったなんていう低コストMVを作っていた彼女らが、今やアメリカで飛行機の上に乗ってロケである。
ドローンを使っているような映像もあるが、恐らく自前だろう。
「MONSTERS」の頃はぎこちなさフルバーストだった演技も、My landscapeでは板についている。
何より、そもそもの歌が上手くなった。
アユニ・Dの出世率が抜きん出ている。
セントチヒロ・チッチ、アイナ・ジ・エンドが二大巨頭としてサビの歌割りを任せられてきたが、これからはそこにアユニも加わるに違いない。全アルバムに入っていた「marionnette」あたりから覚醒の気配を感じてはいたが、本楽曲2番サビに行く前のロングトーンには成長を感じて止まない。
全然まとまんない。
間違いないことは、11月29日にはいよいよニューアルバムの発売である。
目の前の楽しみを拾い続ける、さもしい日々であるが、少なくとも11月29日までは頑張って生きていく気持ち。生きる。聴く。