徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

誰も興味のないことを書く。ただひたすらに。合コンルーザー歌詞解説

昨日、ハジメマシテをした女の子と話す会があった。そういった会をなんと呼ぶかは、他人に任せたいと思う。

居酒屋の片隅、笑い声が交錯するスクランブル交差点を周回する一環で必ず通るチェックポイントが、「休みの日何をしているか」である。

ワークライフバランス、ワークライフバランスと声高に叫ばれる働き方改革の畔に立っている僕ら勤め人は、労働の日があれば休息の日もある。いやむしろ、労働の日か、休息の日以外に、僕らが過ごす時間はない。

すると「仕事はなんですか・休みの日は何をしていますか」たった二つの質問だけで、個人の時間の使い方をほぼ完璧に把握できてしまう。

 

で、例によって飛び出した「休みの日何をしていますか」。

家事で終わる日もあれば、ブログ一生懸命書いている日もあるし、曲作っている日もある。日がな本を読んだりすることもある。寝て終わることだけはない。

いくつかの選択肢の中で、場にふさわしい最も刺さるであろう応答をする。

 

針が刺さるのは、接触する面積が小さいからである。

 

そう、刺さるというのは、触れる面積が少なくなければ起こり得ない現象だ。つまり、その場に置いて最もマイノリティと思われるであろう話をすること。それが会話においての「刺さる」である。

僕は瞬時に、「曲を作っている」を選択した。

見事に刺さった。曲?曲作るってなに?

で、まぁ聴かせるわな。こんな曲です。こんな曲を世の中に落としています。

 

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一畳にも満たない狭小なコミュニティの中で、これは比較的いい歌であると評価されたた曲である。作者としても、心の叫びをきちっと回収しながら韻も踏みながら書けた割にキャッチーなメロが乗ったので、満足の出来だった。いかんせん編曲と演奏のスキルがザルなのでこの程度だが、まだまだ可能性を残してる曲だと信じている。

つって、聴かせてみたものの、やっぱりね、理解されないんだ。これが。

なんか歌ってる〜。え?ラップなの?あ、歌った。

まぁ、居酒屋である。雑然とした居酒屋じゃ聴けないよね、そうだ、そりゃそうだ。

でも、悔しかった。この曲に込めた心と言葉を、思い知るがいい。

 

ということで、全部書く。聴かなくていい。読まなくていい。だけど書く。書かせてくれ。

 

 

【主題】

合コンとは、出会いの場であるが、出会いの場以上でも以下でもなく、出会い以上の何かを求める場合には至極能動的なアプローチが求められる。非常に難しい。結果、出会ってばかりで終わる。

 

【言葉あそび】

一番Aメロ①

アフター飲み会 光る大都会 一期一会の先になんかあるのかい

仮初めの出会い 書き留めるID 期待しないふりを装った期待

この後は二人で飲み直そう 口の中で呟く何度も

言えずにたどり着いた駅のホーム サヨナラベイビーブルーさ毎度

「飲み会」「大都会」「なんかあるのかい」と、「kai」でありがちな脚韻を踏みながら、「一期一会」にて読みは違えど「会」を登場させる。

「なんかあるのかい」と「仮初め」の間が半拍も置かない。「ka」の音を連発させる。小気味よくなる。

「仮初めの出会い」と「書き留めるID」で割と綺麗めに韻を踏む。「ID」はLINE IDのことであり、あえて業界用語っぽく「ディーアイ」と読ませたことにより韻を踏むことに成功した。

「このあとは二人で飲み直そう」以下は、ケツを「ou」で合わせる以外のことは何もしていない。情景重視のリリック。

 

一番Aメロ②

途切れ途切れのSNS 弱気な僕とは決別です

雄弁に語るLINE上のアリア 校正を重ね吐き出したライマー

男前などクソ食らえだ 女々しさを塗ったくった刃

射止めるはずが切った縁 既読のまま動かないティンカーベル

「SNS」と「決別です」。ベタベタに踏む。

「雄弁に語るLINE上のアリア」これは大バッハのG線上のアリアのパロディーというか、引用というかである。LINEを「せん」と読ませることにより、「二人で飲み直そう」も言えなかった奥手な人間がLINEの上では非常に饒舌である様を表現している。さらに「校正を重ね吐き出したライマー」と続くことにより様相はさらにはっきりとする。書いたり消したりしながらなんてLINEを送るか逡巡している姿が浮かぶ。

「アリア」、「ライマー」と踏んだあと、「男前などクソ食らえだ」内の「前な」、「らえだ」でも踏む。からの「刃」。「aia」と「aea」が大活躍。

「切った縁」、「ティンカーベル」。「既読のまま動かないティンカーベル」では、相手のLINEアイコンがティンカーベルであること、あの軽やかに飛び回るティンカーベルが既読になったまま固まって動かない悲哀を表す。

 

一番Bメロ

友達の友達の友達の友達の友達と

酒を飲み笑いそれでどうした それがどうした

実話と本音。それがどうした。

 

一番サビ

いつも出会いばかり そう、出会って終わり

固定顧客にはならないあなたに

何を思い何を感じたのだろうか なんだろうか

一縷の望み 込めたアクションに

冷ややか極まるシラけた眼差し

始まらないから終わらないこの湿ったストーリー

主題の登場である。

「いつも出会いばかり そう、出会って終わり 固定顧客にはならないあなたに 何を思い何を感じたのだろうか なんだろうか」

手段というのは往々にして目的化されやすいものである。

DM打つのも広告出すのも経費削減するのも会員数増やすのも全部売上の拡大と利益の最大化が目的なのだけれど、現場においては広告出すことが目的化しかねないみたいな話だ。

「出会いを求める」すなわち「恋人を作りたい」であり、恋人を作ることが目的であるならば手段はぶっちゃけいくらでもあるだろうに、なぜか出会うことに執着し、出会いにまみれ、出会ってばっかりいる不毛さ。出会っては別れもせずに消えていく泡沫のような彼女たちに何を思い何を感じたんだろうか。何だろうか。

気になる女性と出会ったとして、一縷の望みを込めてアクションしたところで冷ややか極まるシラけた眼差しを食らう。ティンカーベルは動かない。

「始まらないから終わらないこの湿ったストーリー」

以上。

 

2番Aメロ

Tomorrow never knows あけすけなNO 落とし所は消費者の保護

生ぬるいエゴを溶かしたメロウ 歯槽膿漏のようにジュクジュクの思想

多感な時期をフイにしたから分かんねぇコミュニケーションのいろは

笑顔の裏引きつったけったい顔 カモンベイベードゥザロコモーション

「knows」と「NO」である。

結局、合コンにおいては男女両サイドが消費者となり得る。そのため、男性が商品で女性が消費者しているという見え方もある。「消費者の保護」。つまり、女性にいいようにしてくださいという、極めて奥手な考え方である。

奥手な考え方を総称して、「歯槽膿漏のようにジュクジュクの思想」が出てくる。

「エゴ」「メロウ」「歯槽膿漏」「思想」と怒涛の韻踏合組合。とにかく歯槽膿漏の語呂の良さが痺れる。

「多感な時期」以降は特に踏んでない。思春期に真っ当な恋愛をしてこなかったことが敗因であるという、非建設的後悔。

 

2番Bメロ

友達の知り合いの会社の取引先の営業と

酒を飲み気を使ってどうした これがどうした

実話と本音。これがどうした。

 

2番サビ

いつも出会いばかり そう、出会って終わり

固定顧客にはならないあなたに

何を与え何を強いたのだろうか なんだろうか

求めた出会い 需給の釣り合い

均衡価格がわからないままに

閉幕後のカーテンコールを待つ人はない

主題その二である。

出会った時点で、他人ではない。知人だ。袖振り合ってしまったが最後、必ず何らかの印象を抱く。果たして僕はあなた方に何を与え、何を強いたんだろうか。何だろうか。

需要供給曲線というものがある。

manabow.com

市場が求めている価格と、供給者のエゴとしての価格。両者が拮抗する点があるよね。それを、均衡価格と呼ぼうね。

男女間の均衡価格がわからないことが、話がこじれてきている原因だ。違いない。だから過供給になったりするのである。

「閉幕後のカーテンコールを待つ人はない」

合コンの幕が下りたあと、再び幕が上がることがなかったのでした。

以上

 

Cメロ

楽しかったねまた飲もうね 人間関係の玄関で

いい加減なことばっか ちゃちな言葉だ

それでも期待しちゃってんのまだ

なんだかんだ言っても初回だ じくじくして終わって行くシャイだ

星の数ほどの出会い別れ 核融合と核分裂の果て

「楽しかったねまた飲もうね」というお決まりのセリフ、それこそが「人間関係の玄関」。「間関」と「玄関」で踏む。「いい加減なことばっか」の「減な」も「げんかん」で踏んでいた流れを汲む。

「ことばっか」「言葉だ」「まだ」もベタな韻踏みである。

「楽しかったねまた飲もうね」が社交辞令と知りながらも「それでも期待しちゃってる」チェリーボーイ。

「初回だ」「シャイだ」カーテンコールは無いと言っているのにまだ期待する。

「星の数ほどの出会い別れ」は、実は「核融合と核分裂」ほどにエネルギーを使うものである。マクロな数の多さと、ミクロだけど莫大なエネルギー消費の対比。

 

ラストサビ

いつも出会いばかり そう、出会って終わり

固定顧客にはならないあなたに 何を思い何を感じたのだろうか

なんだろうか

もうこれっきり 二度とは会わない 祭りの後の静けさに揺蕩い

始まらないけど終わっていくこの湿気ったストーリー

主題が落としたサビである。

そして最後。

2度と会わない人に思いを馳せる。なんだかんだ出会いは刺激的で、スローモーションで、楽しいものだ。しかし、心待ちにしていた出会いの場を空っぽで終えた後の静けさ。月明かりが染みる。快活に場を回していたあいつの姿がなぜか浮かんで、無性に情けなくなる。清濁入り混じった感情に揺蕩う。

「始まらないけど終わっていくこの湿気ったストーリー」

以上。

 

 

つまり、こういうことを言いたかった。

これだけが、言いたかった。