ライザップゴルフ 高橋克典さんは特別な事例です
結果にコミット。
一昔前のルー語のような響きを持ったこの言葉は、M&Aを繰り返しながら数年前よりお茶の間に忍び寄り、経営不振と言われどCMは打ちまくる積極攻勢に打って出ている企業、そう、ご存知、RIZAPグループのキャッチフレーズのようなものである。この言葉が出てきてからというもの、成果主義よろしく、手段を選ばずとも結果を出す人に対して、「コミットしてるね〜」なんていう言い方をする人が増えた。僕もその一人だ。
社史を紐解くと、最初は健康食品の会社だったようだ。だが今日、我々が認知するRIZAPは何かといえばダイエットである。中年太りの男女が「テーレッテッテーレテーレテッテーレ」と色黒のダビデ像のごとき身体になるCMが、RIZAPであり、RIZAPのイメージそのものだろう。
この手の製品・サービスに付き物なのが、注釈である。
「個人の感想です」「効果には個人差があります」テレビショッピングの注釈にはこのような言葉が並ぶ。何しろ、断定ほど怖いものはない。できると言い切った場合、できなければいけない。例外なく、やり切らねばならない。そんなリスクを毎度背負ってはいられないからこそ、逃げ道を作っておく。「翌日配送!」と言っておきながら、「対象外の地域もございます」と注釈をつけたり、「全国テレビ東京系列にて好評放送中!」と言いながら、「一部地域を除く」と注釈をつけたり。一部地域に育った僕だからよくわかる。Japanese culture is 注釈って感じだ。
もちろんRIZAPも同様で、これまで放映していたCMでも、下の方にフォント3くらいの米粒のような字でモジャモジャと注釈をつけている。これは把握していた。
しかしライザップの新業態、RIZAPゴルフの注釈。これはすごい。
高橋克典がメインキャスト。たった2ヶ月のレッスンで、125から88にまで大幅に改善しました!という、いわゆる「結果にコミット」RIZAPである。
そして、注釈には以下。
「髙橋克典さんは特別な事例です」
【ライザップゴルフCM】高橋克典さん出演Ver.(限定プロモーション)
これはね、逃げすぎじゃないかと思うわけだ。
「特別な事例」とは、もうアベレージでもなんでもない。結果にコミットすると言いつつ、結果が見えない、不思議な宣伝となっている。*1
例えば布団乾燥機のCMで、ヘナヘナにへたった布団が一発乾燥させただけでフッカフカに生まれ変わったとする。その注釈に「この効能は特別な事例です」とか「特別な布団でした〜〜」なんてことが書いてあったらそれもう布団の問題じゃん、、、となる。うちの布団はどうなんですか。特別な事例は100回中何回訪れるんですか。そもそも特別とはなんですか。何が普通で、何が特別ですか、具体的に教えてください。など、疑問浮上にいとまがない。
景表法のような営業法務に明るくないが、あれだけ大々的にCMを売っているのだから、日本の法律は「高橋克典さんは特別な事例です」を許容しているのだろう。注釈をつけ、逃げ道をつけなければ突かれまくる、細かい国民性を有している日本人であるが、注釈のルールはおおらかだったらしい。
嘘はつけないが、よく見せなければ結果にコミットできない。ジレンマである。99%除菌、タウリン1000mg。ヘアワックスに化粧。個人としても、法人としても、虚偽ではない程度の事実を並べて僕らは生きるのであった。
*1:実はCM内、アベレージについての注釈の記載もある。レッスンを受けた人のスコア変動の平均値は-18.8±12.6だそうである。ある人は6程度しか短縮できなかったが、ある人は30短縮した。高橋克典は37も短縮した。特別な事例です!!